大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和51年(わ)150号 判決 1976年8月09日

本籍

福岡県大川市大字向島一、六六九番地の一

住居

右同所

会社役員

中野誠吾

昭和四年三月三〇日生

本籍

福岡県大川市大字向島一、六六九番地の一

住居

右同所

会社役員

中野静代

昭和六年三月一一日生

右両名に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官中倉章良、同滝口知克出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人中野誠吾を罰金九〇〇万円に、被告人中野静代を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人中野誠吾において右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人中野静代に対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中野誠吾は、福岡県大川市大字向島一、六六九番地の一に居住し、同所において、中野商会の名称で木材販売及び製材業を営んでいたもの、被告人中野静代は、被告人誠吾の妻で右中野商会の事務全般の責任者として経理、会計事務一切を担当していたものであるが、被告人静代は、被告人誠吾の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、

第一、被告人誠吾の昭和四七年分の真の所得金額は、四、七三九万九、五八〇円で、これに対する所得税額は、二、四八四万八、〇〇〇円であったのにかかわらず、売上の一部を公表帳簿上に記載せず、これを架空名義の簿外預金とするなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日、同市大字榎津字大溝三二五番地の一所在の大川税務署において、同税務署長に対し、昭和四七年分の所得金額は一、一六五万九、〇四六円で、これに対する所得税額は三八一万四、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税二、一〇三万三、三〇〇円を免れ、

第二、被告人誠吾の昭和四八年分の真の所得金額は八、〇六六万五、七五四円で、これに対する所得税額は四、七二四万二、七〇〇円であったのにかかわらず、前同様の不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日、前記大川税務署において、同税務署長に対し、昭和四八年分の所得金額は三、四七八万一九三円で、これに対する所得税額は一、七一八万三、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税三、〇〇五万八、九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人両名の当公判廷における供述

一、被告人誠吾の検察官(四通)及び大蔵事務官(六通)に対する各供述調書

一、被告人静代の検察官(六通)及び大蔵事務官(九通)に対する各供述調書

一、古賀勝の大蔵事務官に対する供述調書

一、被告人静代作成の簿外仕入の、簿外売上の及び受取手形についての各上申書

一、被告人誠吾作成の簿外賞与の上申書二通

一、大蔵事務官作成の告発書及び脱税額計算書説明資料と題する文書

一、田中秀之(六通)、上野寛二(三通)、吉原義朗(三通)、北原三池、武田誠之、新江禎(二通)、前田敏雄、梁谷啓三及び今仲孝作成の各証明書

一、大蔵事務官作成の西日本相互銀行佐賀支店の簿外定期預金の受取利息及び受取利息に対する源泉所得税についての調査報告書

一、大蔵事務官作成の青色申告の取消決議書の写

判示第一の事実につき

一、塚本玉義及び青松静男の大蔵事務官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四七年分)

一、被告人誠吾作成の昭和四七年分の所得税の確定申告書一枚(昭和五一年押第一八九号の一三)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四八年分)

一、売上帳(昭和四八年分)一綴(昭和五一年押第一八九号の一二)

一、被告人誠吾作成の昭和四八年分の所得税の確定申告書一枚(同号の一五)

(法令の適用)

被告人らの判示第一及び第二の各所為はいずれも所得税法二三八条、一二〇条一項三号、二四四条一項にそれぞれ該当するところ被告人静代については所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪なので、被告人誠吾については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人静代については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人誠吾を罰金九〇〇万円に、被告人静代を懲役八月にそれぞれ処し、被告人誠吾において右罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、被告人静代に対し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

昭和五一年八月一九日

(裁判官 浦上文男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例